土の中の生き物を観察する方法

土の中の生き物の数

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「土は生きている」という言葉に象徴されるように、私たちの身の回りにある土は、無数の生き物で満ち溢れています。

顕微鏡でしか見えないようなバクテリアから、モグラのような哺乳類まで、土の中で生きる生き物たちは「土壌生物」と呼ばれています。
こうした生き物は地上から50cm程度の深さの場所に生きています。

地上の生き物は高い木の上や山の上にもいるので、地上から50cmの範囲だけに棲んでいる土壌生物は、随分と狭いところで生きているように思えるかもしれません。
しかし、その数は地上の生き物の10倍以上にもなります。

土の中の生き物の数の調査で、森の中の土を1mの範囲で、15cm程度の深さで掘り起こしたところ、大きさが2cm以上あるミミズやムカデの仲間は約300体も発見されました。
計算では、それよりも小さな、虫眼鏡を使って見える大きさの生き物は200万体、顕微鏡を使って見えるバクテリアやカビは10兆体にもなりました。

どうやったら生き物がいることが分かるのか?

大きな生き物は、肉眼で注意深く探せばそれなりに見つかります。
小さなものは土の粒の表面にいるので、土の粒を顕微鏡で見ればいることがわかります。
しかし、その間の大きさの生き物は、小さいために見分けにくく、バクテリアに比べると数が少ないので、普通に顕微鏡で探しても簡単には見つかりません。

そこで、虫眼鏡で見ないとわからない、2cm以下、0.1mm以上の生き物を、効率よく採集できるように考案された道具が「ツルグレン装置」です。
この装置は、土の中にいる生き物が、熱や光、乾燥を嫌うことを利用し、土の中から追い出す仕組みです。

ツルグレン装置の仕組み

ツルグレン装置の図

仕組みはかなり簡単で、漏斗(じょうご)のような先端がすぼまった筒と、それを支える台座から構成されています。
この漏斗の中に土を詰め、すぼまった方を下に向けてセットします。

上から電気スタンドで光を当ててやると、土の中にいる生き物たちは熱や乾燥を嫌って下に移動していきます。
暗く湿った土の中にいる動物にとって、明るく乾燥した環境は大敵です。
過酷な環境を避けるため、生き物たちは安全な地下深くまで逃げようとします。

下に逃れた生き物たちは漏斗の先端に集まり、ぽとりと落下する仕組みです。
装置の下には水を入れた皿を置き、落ちてきた生き物を回収します。
落ちてきた生き物たちは水でおぼれるので、ゆっくりと虫眼鏡や顕微鏡で観察できます。

自分から見つけに行くのではなく、土壌生物の習性を利用して集めるのが、この装置の特徴です。
これなら苦労せずとも、簡単にたくさんの生き物を観察できます。

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