天体望遠鏡の主役:反射望遠鏡

星を見るための大口径望遠鏡

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17世紀に最初に登場し、世界に革新をもたらした屈折望遠鏡で下が、天体観測に使うためにサイズを大型化・高倍率化するには限界がありました。
そこで考え出されたのが、レンズの代わりに鏡を使って光を集め、接眼レンズで拡大する「反射望遠鏡」です。

レンズは大型化すると分厚くなって光が通る量が減りますが、鏡なら大きくすればするほどたくさんの光が集められます。
それに、大きなレンズを作るより、大きな鏡を作る方が比較的簡単で安く済みます。

どうしても大型化するために持ち運ぶには不便ですが、据え付けて使う天体観測用なら問題になりません。
現代では、反射望遠鏡(又はレンズを組み込んだ屈折反射望遠鏡が一般になっています。

反射望遠鏡の鏡

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反射式望遠鏡では、光を集めるメインの大きな鏡を「主鏡」、集めた光の経路を変える小さな鏡を「副鏡」と呼んでいます。
別の鏡やそれを支える棒があって邪魔にならないのか?と疑問になりますが、全く問題にはなりません。

遠くの物を見ているときに目の前に細い糸があっても邪魔にならないのと同じように、はるかかなたの星にピントを合わせているときは、支柱は「近すぎる&細すぎる」ので、視界の邪魔にならなくなります。

反射望遠鏡の種類

反射望遠鏡にもいくつかの種類があり、大別すると「ドーナツ型の鏡を使う物」「横に接眼レンズが付く物」「斜め向きに光を反射させる物」に分けられます。

横向きに反射させる物(ニュートン式)

ニュートン式

ニュートン式は1672年に、イギリスの物理学者アイザック・ニュートンが考案しました。
仕組みは簡単で、凹面鏡で集めた光をもう一枚の鏡で真横に曲げ、それを接眼レンズで拡大して見るという物です。

この方法は比較的シンプルですが、視界の中心がシャープで色のにじみも無く、サイズを大きくしやすいという利点があります。
現代では口の部分に補正板を入れて、像のにじみを半分に抑えた「シュミットニュートン式」が一般的です。

ナスミス式

改良型には「ナスミス式」があります。
ニュートン式を何mもあるようなサイズにすると、接眼レンズはとても高い位置に付けなくてはならなくなります。

そこで、鏡をもう一枚入れることで、レンズの場所を下に出来るように改良されたのがこのタイプです。
天文台にあるような大型の物は、この方式を使っています。

ドーナツ型の鏡を使う物(グレゴリー式)

グレゴリー式

このタイプは1663年にイギリス天文学者チャールズ・クレゴリーによって考案されました。
考案されたのはニュートン式よりも早かったものの、そのときの技術では必要な精度が得られなかったために試作は失敗に終わり、量産が開始されるのはしばらく後になります。

屈折式望遠鏡のように、接眼レンズが筒の後端についていることが特徴で、ニュートン式に比べると筒の長さを短くできます。

カセグレン式

よく似たタイプには、17世紀にフランスの司祭ローラン・カセグレンが開発した「カセグレン式」があります。
こちらは副鏡が凸鏡で、反射によって生じる形のにじみを抑えることができる設計です。

横にも接眼レンズを付けて、鏡を平面に変えて45度傾けることで、ニュートン式に切り替えて使えるようになっている物もあります。
ただし、高精度な副鏡を作るにはかなり高度な技術が必要なので、小型の望遠鏡でカセグレン式を使っている物はあまりありません。

カセグレン式には、鏡の形状を微妙に変えた「リッチー・クレチアン式」「ドール・カーカム式」、補正板やレンズを入れて屈折反射望遠鏡にした「シュミットカセグレン式」、「マクストフカセグレン式」などの、発展改良型があります。

斜め向きに反射させる物(ハーシェル式)

ハーシェル式

こちらは18世紀のイギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェルによって考案されましたタイプです。
ハーシェルの時代の鏡は金属の表面を磨いた物が一般的で、現代の鏡よりも反射率は劣っていました。

主鏡+副鏡と反射の回数が多いとその分暗くなってしまうので、副鏡を使わず、主鏡の光をダイレクトに見れるように考案されたのがこちらです。

サイズが小さいと覗いた時に頭が光をさえぎるために使いづらくなり、小型サイズの望遠鏡では使えません。
ハーシェルは天王星の発見で有名ですが、使ったのはニュートン式の望遠鏡でした。

現代では反射率の高い鏡が登場しているので、ハーシェル式は使われなくなっています。

 シーフシュピーグラー式

発展型のシーフシュピーグラー式では、凸鏡の副鏡が入っています。
焦点が長い鏡でないと像がにじみやすいので望遠鏡はどうしても長くなりますが、解像度が高い像を見ることが出来ます。

世界最大の反射望遠鏡

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世界最大の反射天体望遠鏡は、アメリカのアリゾナ州にあるグラハム国際天文台に備えられたLBT(大双眼望遠鏡)です。
この望遠鏡では2枚の8.4mの鏡を二枚使い、11.9mの鏡を使ったときと同じ量の光を集める巨大な「双眼鏡」で、形式はグレゴリー式です。

単一の鏡を使う反射式天体望遠鏡で最大の物は、アフリカの北西にあるスペイン領カナリア諸島ラ・パルマ島にあるロケ・デ・ドス・ムーチャチョス天文台に備えられた、口径は10.5mのカナリア大望遠鏡(GTC、またはGranTeCan)です。
こちらの形式は、カセグレン式の改良型の一つ、リッチー・クレチアン式となっています。

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宇宙に浮かぶハッブル宇宙望遠鏡も反射望遠鏡で、リッチ-・クレチアン式を採用しています。
口径は2.4mとそれほど大きくありませんが、宇宙にあるので大気に邪魔されない鮮明な映像を撮影でき、様々な発見を成し遂げました。

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