霧箱を作ろう

いざ放射線の痕跡を目撃せん

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霧箱の原理は非常にややこしいように思われますが、装置の構造自体は非常に簡単です。
基本は密封できる透明な入れ物、冷却用のアルミのふただけで作ることが出来ます。

後は霧を作るアルコールと、冷やすためのドライアイスがあれば実験が可能になります。

用意する物

・透明な容器(直径10cm以上。形と材質は何でも可)
・黒いビニールテープ 
・黒いアルミ板(または、普通のアルミ板と黒画用紙)
・スポンジテープ(隙間テープ)

・マントル(ガスランタンの芯)

・深めの皿 ・ドライアイス
・LED懐中電灯
・スポイト ・エタノール(消毒用アルコール)

1. 容器を準備

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まず、霧箱の本体となる容器を準備します。
容器の形状は何でも構いませんが、とりあえずは透明であることが必須条件です。
大きさは直径が10cm以上、高さも同程度あるものにしましょう。
後でアルミの板を切ってふたにするので、蓋をしやすい形にした方が無難です。

この容器の内側の底の部分を囲むように、スポンジテープをぐるりと貼りつけます。
スポンジテープにアルコールを染み込ませ、容器の中をアルコールの蒸気で充満させる仕組みです。

2. アルミ板を用意

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容器にふたが出来るように、アルミ板を切り抜きます。
このアルミ板は、ドライアイスの冷気を伝えて装置内部を冷却するための物です。
ある程度の厚みがある方が、冷却性能が高まります。

アルミは柔らかいとはいえども金属なので、加工にはある程度の技術が要ります。
特別な道具が無くても加工ができるように、厚さは1mm程度までの物を選びましょう。

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切る時には線に沿って、定規を使ってカッターでまっすぐな溝を入れます。
最初は浅く溝をつけ、大丈夫なら2回目以降は深く傷を付け、込める力を強くしながら何度か繰り返します。
5~6回繰り返すと、今度は裏面にも同じことを行います。

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切れ目が出来たら、それに沿って何度か折り曲げると、やがてちぎれます。
切れ目に沿って折れるように、木材などを当てて折り曲げます。
切り口で手を切る危険性もあるので、軍手は忘れずにつけるようにしましょう。

3.アルミ板を黒くする

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霧箱は上から観察するのですが、上から見たときにそこが黒い方が、放射線が通ったときに出来る「霧」が見えやすくなります。
黒いアルミ板が用意用意できない場合、黒画用紙で覆えば大丈夫です。

画用紙とアルミ板の隙間が空いているとアルコールの蒸気が逃げてしまうので、接着剤やテープでしっかりと密着させるようにしましょう。

4.放射線源を用意

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自然放射線は都合よく箱の中を通ってくれるとは限らないので、霧箱の中には放射線を出す物を入れてやりましょう。

比較的手に入りやすい放射線源は、ガスランタンに使う「マントル」です。
マントルは電球で言うところのフィラメントのような物で、灰になった状態で加熱されると、白色に強く発光します。
このマントルがないと、燃料を燃やしても火が出るだけで、「灯り」になりません。

このマントルは麻やレーヨンといった繊維に、硝酸セリウム、硝酸トリウムという成分を染み込ませたものです。
このトリウムは放射性物質で、アルファ線を始めとする放射線を常に出しています。

放射性物質なんて買ってもいいの?と思うかもしれませんが、通販やホームセンター、アウトドアショップで普通に売っています。
使われているトリウムの強さや量は大したことがないので、食べでもしない限りは問題ありません。

最近ではトリウムの量を減らしたマントルも開発されていますが、実験に使うには昔ながらの物の方が良いでしょう。
「コールマン」などの海外メーカーの純正品がお勧めです。

5.マントルを取り付ける

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次に、霧箱のふたの中央部分に、クリップを曲げてから貼りつけ、先端がアンテナのように突き出た状態にします。
マントルを2cm四方のサイズに切り、このアンテナの先端部にひっかけるようにして取り付けます。

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マントルのトリウムから出るアルファ線は、エネルギーが大きい代わりに紙切れ一枚で止まってしまうほど透過力が低い放射線です。
そのため、マントルを取り付けるときにテープなどで表面が覆われてしまうと、放射線が出なくなります。

なるべく接着剤やテープは使わず、軽くひっかけるだけにとどめましょう。

組み立て

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スポイトを使ってスポンジテープにエタノールを染み込ませます。
霧箱の内側をエタノールの蒸気で満たすために、たっぷりと染み込ませましょう。
あふれた分は、ティッシュなどで吸い取っておきます。
容器の内側、ふたの表側も、エタノールで濡らしていきます。

黒いビニールテープを使ってアルミのふたを容器に貼りつけます。
空気が入ると内部の状態が乱れるので、絶対に空気が入らないようにテープでぎっちりと密封しましょう。
これで霧箱の完成です。

実験方法

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冷却のためのドライアイスは、深皿に軽く盛り付けられるぐらいの量を用意しましょう。
皿にドライアイスを入れ、表面を平らにならします。

霧箱のアルミのふたの側を下にして、ドライアイスの真ん中にセットします。
後は内部が冷却されて過飽和の状態になるのを待つだけです。

スポンジテープのエタノールは自然に蒸発して、気体となって箱の内部を満たします。
アルミのふたから伝えられるドライアイスの冷気によって冷やされ、数分程度で過飽和の状態になります。

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観察するときは霧箱を真上から見下ろし、側面から懐中電灯の光を当てて、霧の筋が出来るかどうか確かめます。
周囲が明るすぎると霧が見えにくいので、屋内で観察する方が良いでしょう。

上手くいかない場合

上手にいかない場合に考えられるのは下記のどれかです。
1.空気が入っている(密封がうまくいっていない)
2.エタノールが足りない
3.冷やし過ぎ

空気が入ると、気体に動きが生じて安定した過飽和の状態ができにくくなります。
また、霧の核になるチリや埃が入ってきて、イオンが核となる前に霧が出来てしまうことも考えられます。

エタノールが不足すると内部に蒸気が充満した状態にならないので、放射線が通っても霧の筋が出来ません。
エタノールは垂れる寸前までスポンジテープに染み込ませ、容器の内側を濡らしておきます。

冷やし過ぎると霧が生じにくくなるので、10分程度経っても見れない時は、一旦ドライアイスから霧箱をどけて、冷却を中止しましょう。
温度が戻るまで待ち、その間に隙間が出来ていないかどうかを確認してから再開します。

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