放射線って何?

私たちの周りを飛び交う放射線

radiation-646217_1280

放射線と聞くと恐ろしいように聞こえるかもしれませんが、実は身近にあふれている物です。
空や地面、食べ物や私たちの体からも放射線は出ています。

放射線はどこから出てくる?

atom-68866_1920

そこら中を飛び交っている放射線ですが、その出どころは物質を構成する原子そのものです。
原子は中心に陽子と中性子で出来た核があり、その周囲を電子がまわっているという構造をしています。

 放射性物質

大抵の原子は陽子と中性子、電子の数が同じで、安定した構造をしています。
しかし、中には中性子の数が多かったり、原子自体が非常に大きかったりして、構造的に不安定な物があります。

前者には中性子が2つ多い水素「三重水素」や中性子が2つ多い炭素「炭素14」、後者にはウランやプルトニウムなどがあります。
(同じ元素で、中性子の数が違う物は「同位体」と呼ばれています)

放射線の種類

不安定な原子は壊れやすく、放っておいても光や自分を作る陽子や中性子といったパーツをばらまいて崩壊していきます。
このように原子が壊れる過程で飛び出す部品や光が放射線の正体です。
放射線を出す物質は「放射性物質」、放射線を出す能力は「放射能」と呼ばれます。

放射性物質は放射線を出し続け、やがてもっと安定した、放射能を持たない同位体や別の元素に変化します。
逆に、放射能を持たない元素に放射線が当たってパーツやエネルギーが付けられることで、放射性物質に変わることもあります。

普通はゆっくりと放射線が出ていくのですが、人為的な方法で大きな原子を「割る」核分裂を起こすと、ビスケットを割ったときに粉が飛び散るように、大量の放射線とエネルギーが飛び出します。

放射性物質はどんなところにある?

放射性物質はそこら中に存在しており、水の中や生き物の体の中にも含まれています。
というよりも、放射性物質や放射線が存在しない所は、この地球はおろか宇宙の中には無いと言って良いでしょう。

そこら中にあるとはいっても、地球上で私たちの周りにある量は非常に少なく、強力な放射線を出す種類でもないので、何か影響を及ぼすことは基本的にはありません。

多くの原子は、同じ種類でも放射線を出さない同位体と、放射能を持つ同位体の両方が存在し、それぞれがある程度一定の割合で存在しています。
同位体が全て放射性物質の原子もあり、ウランやラジウムがそれに当たります。
ウランは鉱山で採れる金属で、ラジウムは温泉などによく含まれるガスです。

放射線の種類

放射線の種類 2

放射線はいろいろありますが、大きく分けると「原子の部品(中性子や陽子、あるいは小さな原子)」と、「光(電磁波)」があります。

アルファ線は高速で飛ぶヘリウムの原子、重粒子線は炭素や鉄など重たい原子です。
ベータ線は電子、中性子線は中性子と、原子を構成していたパーツが高速で飛んでいます。
エックス線やガンマ線は、光と同じ電磁波の一種です。
それぞれ特徴が異なりますが、大きなエネルギーを持っている点は共通しています。

x-ray-666919_1920

大きなエネルギーを持つので、生き物の細胞に当たると細胞を殺してしまったり、DNAに傷をつけてガンを引き起こしたりします。
逆に、ガンだけを狙ってメスを入れずに破壊したり、熱を加えずに殺菌をしたり、レントゲンのように物を壊さずに中を調べたりするなど、非常に便利なことにも使えます。

宇宙線とは

tarantula-nebula-1245253_1280

宇宙線とは自然の中を飛び交っている放射線の内、宇宙から地表めがけて降ってくるもののことです。
宇宙には大量の放射線が飛び交っており、その量は地上とは比べ物になりません。

sun-11582_1920

太陽を始めとする恒星の中では、原子同士が融合して別の原子になる「核融合反応」が常に起きています。
核分裂とは逆で、小さな原子同士が合体し、もっと重たい原子が出来る現象です。
このときにも膨大な熱や光と共に、余った部品やエネルギーが放射線となって放たれます。

宇宙にはこうした恒星が無数といってもよいほどあり、宇宙に放射線をばらまいています。
また、寿命を終えた恒星は爆発して新たな星を作り出し、このときには生じる鉄や鉛、ウランといった重たい原子が、大量の放射線と共に宇宙にばらまかれます。

核融合や超新星爆発などでばらまかれている宇宙線は非常に強力なエネルギーを持ち、その力は人間が作り出せる放射線の、約1000倍程度にもなると言われています。

降り注ぐ宇宙からの強烈な力

astronaut-602759_1920

宇宙ではさえぎる物が何もないので、生き物が宇宙に出れば大量の宇宙線を浴びることになります。
地上で人間が浴びる放射線量は、年間でおよそ2.5~3.9mSv(ミリシーベルト)ですが、宇宙飛行士の場合、1年で300mSvを優に超える量の放射線を浴びています。

当然ながら、その分だけガンも生じやすくなるので、宇宙飛行士は生涯で宇宙に行ける回数・期間が制限されています。
他の惑星に行く計画を研究するときに、長旅の間に浴びる宇宙線の量をどうやって減らすのかは、宇宙開発の大きな課題となっています。

地球では分厚い大気の層が宇宙線を受け止めてくれるので、地球の生き物たちは安心して生きられます。
それでも、空気が薄い上空を飛ぶ飛行機に乗れば、たくさんの宇宙線を受けます。
その量は結構多く、ニューヨークと成田を往復するだけで0.2mSvにもなります。

とはいう物の、この程度の放射線ならば人間の健康には影響はありません。
私たちの体には高度な自己修復能力があり、仮に細胞やDNAに少々の傷がついても、すぐに治したり、異常が出た細胞を捨てたりしています。

いずれにしても、見えない上に大した影響も持たないので、普通はその存在を実感することはまずないでしょう。

Feel free to link to this page.
PAGE TOP