偏光で見ると「透明」ではなくなる

偏光では透明な物が……

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光が物質に反射したり、中を通り抜けたりすると、光の向きがねじれたり、特定の偏光だけが反射したりします。

このときに反射・屈折・透過する偏光の種類は、物質の種類によって異なっています。
また、同じ物質でも、角度や密度、分子の並び方によって、反射・通過する偏光に違いが生じてきます。

つまり、偏光の向きを調べれば、見ただけで物質の種類や構造が分かってしまうというわけです。
偏光フィルターを使えば、物はどのような姿に見えるのでしょうか。

用意する物

・偏光フィルター×2枚
・透明な下敷き(プラスチック製)×1枚
・セロハンテープ
・カッターナイフ

下敷きは無色透明な板であれば何でもOKです。
透明な物なら、クリアフォルダーやガラス板でも構いません。

1.プラスチックを切り取る

下敷きの端から、10cm四方の板を二枚切り取ります。
カッターナイフを使って深く切れ目を入れ、折り取るときれいにできます。
これは後の実験で使う分として取っておきましょう。

残った部分の真ん中に、偏光フィルターを1枚、テープなどで貼りつけます。
フィルターは後で使うこともあるので、剥がせるようにしておきましょう。

2.セロテープを貼る

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偏光フィルターを貼った側とは反対側に、セロハンタープを貼っていきます。
方向、枚数、長さなど、何も気にせず、とにかくめちゃくちゃに貼りましょう。
なるべく多く、いろいろな方向に貼ると、面白い結果が出せます。

実際に見てみよう

フィルター実験

出来たら、もう一枚の偏光フィルターを持ち、先ほどの下敷きを眺めてみます。
テープを張った方が表、偏光フィルターが裏です。
フィルターの透明度が低いときは、下敷きを挟んで光に透かしてみましょう。

すると、無色透明であったセロテープが、写真のような形に見えます。
角度を変えれば、色や形がどんどん変化します。

なぜこのようなことが起こるのか?

人間の目では偏光はわからないので、透明なセロハンテープを通った光は透明にしか見えません。
しかし、テープを通ったり、反射したりすると、偏光にねじれが生じるようになります。

重なったテープを通り抜ければ、ねじれや変化が何度も繰り返され、偏光の種類が変化していきます。
テープの重なり具合や重なった角度の違いによって、色ごとに振動の向きが変化するので、偏光フィルターを通すと特定の色の光だけが見えるようになります。

詳しく見れば、セロテープが何枚どの角度で重なっているのかが、色で見てわかります。
つまり、偏光フィルターによって、セロハンテープが何枚、どう貼られたかをが、視覚的にわかるようになるのです。

次に、私たちが良く目にする結晶「氷」を、偏光板を通してみてみましょう
実験で使ったものと、輪ゴムを用意します。

1.氷の膜を作る

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下敷きの上に輪ゴムを置き、輪ゴムの内側に水を注ぎます。
もう一つの下敷きを上に乗せてサンドし、冷凍庫に入れて凍らせます。

2.観察してみる

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中の水が凍ったら、下敷きと偏光フィルターを重ねて固定します。
もう一枚のフィルターを持って、氷を眺めてみましょう。

この光の違いは、氷の厚さや密度、固まった分子の角度などによって作り出されます。
透明に見えた氷でも、内部は実に様々な形態をとっているのです。

化学分析に使われている技術

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人間の目では、透明な物質を見ても中にある構造の違いや歪みはほとんどわかりません。
しかし、偏光フィルターを通すことで、反射・通過する偏光の種類が分かり、見ている物質の正体や構造を触れずして知ることも出来るのです。

写真は水晶を偏光顕微鏡で見た物で、透明な水晶の中や表面のずれや傷などが見てわかるようになっています。

偏光の違いから物の構造を把握する顕微鏡は「偏光顕微鏡」と呼ばれており、鉱物学や結晶学、生物学などの分野で利用されています。
工業分野ではガラスの歪みの検査やなどに用いられています。

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