触れずにアルミ缶をぺしゃんこに:大気圧プレス
空気の力で金属をつぶす
マルデブルグの半球は頑丈な金属のボウルを使いましたが、これがもっと弱い容器ならどうでしょうか?
てのひらの面積でも何十kgもの力がかかるので、弱い物なら一瞬でつぶれてしまいます。
今回は手を触れずして、空気の力だけで金属の缶をつぶす「大気圧プレス」を実験してみましょう。
用意する物
・空き缶(アルミ缶)
・ボウルやたらいなど
・トング(ゴミ拾いなどに使う物)
使用する缶のサイズは何でも構いません。
ジュースの缶のように、入り口が狭いものにしましょう。
注意事項
この実験は火や熱湯を使います。
正しい手順を踏み、安全に行わないと、ひどい火傷を負う危険性があります。
必ず安全な場所で、子供は責任が取れる人と共に行わなくてはいけません。
1.水を用意する
缶の中に少量の水を入れます。
1mlの水でも沸騰すれば1.7lの水蒸気になるので、量は少々で構いません。
すぐ横には水を張った入れ物を用意しておきます。
2.火にかける
アルミ缶は焼けて底が抜けることも考えられるので、トングで挟んで火から適当な距離を持たせたまま焙るようにしましょう。
中で沸騰する音が聞こえて蒸気が出てこれば、準備完了です。
3.水に投入
中の水が沸騰したら、すぐに水に浸けて冷却します。
缶の中を満たしていた水蒸気は、冷やされて一気に水に戻ります。
充満していた気体が少量の水に戻るため、内部で缶を支えていた圧力は急激に低下し、缶は外側から押さえつけて来る大気圧によって、一気に押しつぶされます。
場合によっては数秒かかることもあるので、水に浸けてもすぐには離さず、少しだけ待ちましょう。
4.冷やすときのコツ
冷やすときには、缶を「逆さ」にして、水で蓋をするような形にして浸すことが大切です。
口を上にして水に浸けると、冷却して内部の気圧が下がったときに、口から外の空気が入ってきます。
こうなると、缶がつぶれるよりも先に空気が入ってくるので、内部の気圧が再び上昇して、缶はつぶれずに耐えてしまいます。
逆さにして水に浸ける以外に、沸騰した後に粘土で口にふたをしてから水に浸けるやり方もあります。
これなら逆さにする必要はありませんが、熱い蒸気が出て来る口に手を近づけることになるので、火傷に気を付けないといけません。
注意事項 その2
この実験をするときは、火傷に注意しましょう。
缶を逆さにするときに中の熱湯が飛び散れば、大やけどを負うこともあります。
また、本来は火にかけることが無い容器を使うので、熱し過ぎれば溶けて破れる危険性もあります。
水に入れるときは、必ず体から離した状態で、そっと入れましょう。
他の缶でも出来る?
もっと大きなドラム缶でも、やり方次第では同じように潰してしまうことが出来ます。
この場合、五右衛門風呂のようにたき火にかけて中の水を沸騰させます。
中の空気を追い出したら蓋をして、ホースで水をかけてやると、大きな音と共に頑丈なドラム缶がへしゃげてしまいます。
アルミ缶は簡単に潰せるのですが、スチール缶はつぶせません。
アルミよりも頑丈な鋼鉄は、ちょっとやそっとの力ではつぶれないようです。
また、スチール缶の大きさは手のひらほどなので、かかる大気圧もそれほど巨大ではありません。
缶の頑丈さに対して、かかる力が不十分ということです。
ドラム缶の素材もスチールですが、飲料の表面積がずっと大きく、それだけ大気圧も受けやすくなっています。
サイズに対して素材の厚みも薄いため、飲み物の缶と違って大気圧でつぶすことが可能というわけです。
もしもバーベキューコンロなどがあれば、一斗缶などで挑戦してみるのも面白いでしょう。
ただし、中に油が入っていた物(油性の塗料も)、ガス缶などは極めて危険なので、絶対に使わないようにしましょう。