振り子実験 Advanced 1:リサージュ図形
振り子が描く数学的図形
振り子という物は、基本的には2方向にしか動きません。
振り子の重りが動く様子を真上(あるいは真下)から見れば、一直線になります。
では、「2つの振り子を1つにした」場合、その振り子はどんな図形を描くのでしょうか?
用意する物
・500mlのペットボトル×1本 ・タコ糸 ・短い紐
・90cm程度の木の板×1枚 ・ヒートン×2
・墨汁(あるいは絵の具) ・画用紙 ・新聞紙
・電動ドリル(またはガムテープと穴あけパンチ) ・ハサミ ・テープ
1.振り子を作る
この実験では、ペットボトルを重りにして振り子を作ります。
中に墨汁を入れ、動かしながら先端に空けた穴から振りまくことで、振り子が描く軌道を画用紙に描きます。
ペットボトルの底を切断し、縁に三つの穴を等間隔に空けます。
20cmぐらいに切ったタコ糸を3本用意して、これらの穴に通し、ペットボトルの底の中心部で一つに結びます。
なるべく結び目が真ん中に来るようにしましょう。
この結び目に振り子を吊るす糸を通すので、輪っかを作っておくと後の作業がしやすくなります。
2.墨汁の放出孔を空ける
ペットボトルのふたに、電動ドリルで直径3~5mm程度の穴を開けます。
ここから墨汁が下に垂れて図を描きます。
蓋を手で持ってドリルを使おうとすると、滑ってけがをする恐れがあるので、軍手をした上でプライヤーなどを使って固定してから穴を開けましょう。
穴の縁にバリが残っていると、墨汁の放出が乱れるため、削りくずはきれいに取り去っておきます。
もしもドリルが無い場合は、ガムテープに穴あけパンチを使って放出孔を作り、それをペットボトルの口にかぶせれば代わりになります。
3.振り子を吊るす台を作る
板の中心に、まっすぐになるように目印の線を引きます。
中心から左右25cmずつの地点に、それぞれ電動ドリルで穴をあけて、ヒートンを一個ずつねじ込みます。
ここは振り子を吊るすための大事なポイントです。
もしも実験の最中に抜けると悲惨なことになるため、できれば接着剤なども使って入念に固定しましょう。
4.組み立て
最初に、椅子やはしごなど、板を渡すことができる物を用意します。
50cm以上の高さに、板をまっすぐ水平に渡せるようなものにしましょう。
また、実験をすると墨汁が飛び散る可能性があるので、汚れても良い物を使うか、あらかじめ新聞紙などを巻いて汚れ防止をしておかなくてはいけません。
板を渡したら、タコ糸を使った重りを写真のような形に吊るします。
糸の長さは90cmぐらいが目安です。
片方だけをしっかり結んで、もう片方は蝶結びなどで解きやすいようにしておくと、振り子の高さ調節が楽になります。
二つの糸が合流するポイントは、短い紐で糸がYの字になるように固定します。
振り子の放出孔の高さは、床から5cm前後になるようにします。
ただし、中に液体を入れると振り子が重くなって下がるので、空の時に5cmの高さにすると下についてしまいます。
セットするときは、ボトルの中身が満タンになっている状態を想定して、余裕を持って高めの位置にしておきましょう。
実験開始
装置の下には、汚れても良いように新聞紙を敷いておきます。
振り子の真下に画用紙を敷き、中心点が振り子の真下に来るようにセットします。
軌道を描くための物は墨汁ならわかりやすくてベストですが、絵の具を溶かした水でも大丈夫です。
はっきりと見えやすいようにするため、濃い目に作っておきましょう。
重りを引き寄せ「穴を指でふさいで」、墨汁を中に注ぎ入れます。
手を離すと、重りは複雑に動きながら、画用紙に墨汁を落として図形を描いていきます。
あまりに長い間放置していると、墨汁が落ち過ぎて何が何だかわからなくなるので、図の形がある程度分かるようになったら重りを止めて、残った墨汁を容器に回収します。
リサージュ図形
振り子によって描かれたこの図形は、リサージュ図形(リサジュー図形、リサージュ曲線とも)呼ばれています。
1855年にフランスの物理学者ジュール・アントワーヌ・リサージュが考案したことからこの名前が付けられました。
彼よりも40年前にアメリカの数学者ナサニエル・バウディッチが研究していたので、バウディッチ曲線とも呼ばれています。
この図形は二つの振動する物によって作られます。
今回の実験で使った振り子の場合、Bの振り子がどんな向きに動いても、Aの部分はブランコのように一定の向きにしか動きません。
この「二つの振り子が一つになっている」状態がリサージュ図形の源です。
リサージュ図形のバリエーション
振り子の周期は振り子の長さによって決まるので、二股の部分とまっすぐの部分の長さが変われば、それぞれの周期も変化し、図形も違った形になります。
また、最初にどの場所から振り子を離すかによっても図形が変化するので、振り子を一つ用意すれば色々な図形をいくつも作ることが出来ます。
バリエーションは様々ですが、どんなリサージュ図形でも「平行四辺形の中にまとまる」という共通点があります。
仮にこの実験で重りから墨汁を出しっぱなしにして放置していれば、角が丸まった平行四辺形になっていくでしょう。