単三電池で強力電磁石
電気を流せば磁力が生まれる
金属に電気を流せば磁場が生じるなら、それをまとめたら磁石になるのでは?
電磁石は、まさにそんな発想から作り出された磁石です。
電磁石の仕組み
電磁石は幾重にもまかれたコイルと、その真ん中を通る鉄芯から成り立っています。
このコイルに電流を流すと、銅線の周囲で磁場が生じます。
それぞれの銅線の磁力線の向きが重ねられ、コイルの端から普通の磁石と同じ形の磁場が生じます。
このように、磁力を重ねるように巻かれたコイルは「ソレノイド」と呼ばれています。
鉄芯を入れる意味
コイルだけても電磁石として機能しますが、鉄の芯を中に入れると磁力線が束ねられて密度が上がり、磁力が大きく向上します。
鉄心があるのとないのとでは、200~300倍もの差があると言われています。
芯に使用するのは、「強磁性体」と呼ばれるタイプの金属、つまりは磁石にひっつくタイプの金属です。
代表的な物は鉄ですが、その他にもニッケルやコバルトがあります。
電磁石の使い道
電流を流している間だけ磁石になり、切ると磁力を失う電磁石は、現在では私たちの生活になくてはならない部品の一つになっています。
例えばモーターは、コイルに電流を流して電磁石にし、他の磁石と反発・吸引させることで回転させる仕組みです。
スピーカーの音を出すのも電磁石です。
音楽の電気信号を電磁石に流し、その磁力でコイルを振動させることで音を出しています。
また、クレーンやショベルカーに取り付け、鉄製の物を吸いつけて持ち上げる「リフティングマグネット」のように、自動車を丸ごと一つ持ち上げることも出来ます。
非常に高パワーでありながら、電源を切ればすぐに離せるので、とても重宝されています。
このほか、磁気浮上式リニアモーターカーを浮かして動かすためにも電磁石が使われています。
電磁石によって車体を浮かし、さらに磁石同士の反発と吸引の力を用いることで、車体を浮上させてレールに沿って走らせています。
開発中の「超電導リニア」は、大量の電流を効率よく使える超電導磁石を利用し、時速600kmもの超高速走行を実現しました。
電磁石を作ろう
すごい力を秘めている電磁石ですが、作るだけならとても簡単です。
しかも、方法さえ工夫すれば、単三電池だけも相当に強力な電磁石も作れます。
単三電池一本で60kg、最大で数百kgのものを持ち上げられる物もあります。
用意する物
・ボルト ・エナメル線 ・導線
・単一電池×1(または単三電池×2) ・電池ケース
エナメル線は銅線をエナメルでコーティングした物です。
エナメルは電気を通さないので、コイルを作ってもショートを起こしません。
ただし、使うときは電源とつなぐ部分のエナメルをはがさないと電気が通りません。
作り方
作り方は非常に簡単です。
鉄芯となるボルトに、エナメル線を何重にも巻き付けるだけです。
コイルがほどけないように端をテープなどで留めれば完成です。
端の部分に導線で電池を繋げば、鉄芯が磁力を帯びて磁石になります。
電流の向きを反対にする(電池の+-を逆にする)と、磁石のS極とN極も反対になります。
電池の直流電流を使う磁石の場合、電流を流してから磁力が最大になるまでは、少しばかり時間がかかります。
ひっつく力が弱いと思ったら、少しだけ待ってみましょう。
電磁石を強くする方法1:電流を強くする
電磁石の磁力の源は電気なので、大きな電流を流せば磁力もアップします。
電池を強力な物に変えたり、数を増やして直列つなぎにしたりしてみましょう。
電池が単一でも単三でも、容量が違うだけで電流・電圧はほぼ同じなので、種類その物を変えないと強くなりません。
マンガン電池よりもアルカリ電池、1.5Vよりも9Vといった具合です。
電磁石を強くする方法2:抵抗を弱くする
コイルを作る線の電気抵抗が弱ければ、同じ電源でもよりたくさんの電流が流れます。
鉄のよりも銅の方が電気抵抗は小さいので、銅のエナメル線を使いましょう。
金やプラチナは抵抗がとても小さい金属なので、もしも貴金属のエナメル線で作った電磁石なら、さらに強力になるはずです。
また、電流が通る線が短ければ、その分だけ抵抗も少なくなります。
磁力が弱い場合は、コイルが長すぎる可能性があるので、もっと短くしてみましょう。
ただし、あまりに大量の電流を流すと線が過熱して、火傷をしたり、最悪の場合火が付いたり線が溶けたりします。
注意しなくてはいけません。
電磁石を強くする方法3:コイルを巻く数を増やす
電磁石の磁力は、まかれているコイルの磁力が集合した物です。
同じ長さの線でも、なるべくたくさんの数を巻いていれば、磁力はアップします。
しかし、たくさん巻くために線を長くすると、今度は電気抵抗が大きくなって磁力が低下します。
電磁石を強くする方法4:鉄芯を太くて長い物にする
芯が太く、長くなれば、それだけたくさんの磁力線をまとめることができるので、磁力は強くなります。
ただし、エナメル線の長さが同じの場合、鉄心が太くなればその分コイルの巻き数も減って磁力が弱まります。
同じ電流を流しても、エナメル線の長さや太さ、コイルの巻き数、鉄芯の太さによって、磁石の強さは変化します。
これらの要素はトレードオフ(片方を上げれば片方が下がる)の関係にあるので、電磁石で最大のパワーを発揮させるには、計算して最適な数にしなくてはいけません。
どうすれば最強の電磁石が作れるのかを、いろいろと試してみましょう。
補足:スイッチを切っても磁力が消えない場合
場合によっては、電磁石のスイッチを切っても、磁力が消えずに物がひっついたままになることがあります。
この場合、コイルの磁力によって鉄芯が本当の磁石(永久磁石)になっています。
このように、鉄が磁石になる現象は「磁化」と呼ばれています。
鉄芯に鋼鉄を使うと磁化しやすいので、軟鉄を使わなくてはいけません。
鋼鉄は炭素を含む固い鉄で、軟鉄は炭素をほとんど含んでいない純粋に近い鉄です。
釘などは鋼鉄を使っているので、鉄芯を用意するときはホームセンターやネットで「軟鉄丸棒」などの商品を選びましょう。
ステンレスで鉄が多い物は磁石にひっつきますが、鋼鉄に比べると磁化しにくいので、そちらを選んでみても良いでしょう。