針金とネオジム磁石で作る単極モーター

一番単純な形のモーター

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電流を流すと周囲に磁場が生じます。
では、その磁場を普通の磁石と反発させれば、電線が動くのでは?
そんな考えから生まれ、今ではあらゆる物に使用されるようになった物が「モーター」です。

私たちが一般的にモーターというと、基本的には電気によって力を生み出す「電動モーター(電動機)」のことを指します。
その中でも最も初期に作られた物が、「単極モーター」です。

単極モーターの歴史

単極モーター ファラデー

このモーターは1821年にファラデーが発明しました。
ファラデーが作ったモーターは、水銀と針金、磁石、電源になる磁石を利用した物で、磁石が回転するタイプと、針金が回転するタイプの二種類がありました。
どちらも原理は同じで、針金と磁石のどちらを固定するかが異なるだけです。

水銀を使うのは危険なので、今回作る物は、針金と磁石、電源だけにします。
最初は針金が回るタイプの単極モーターを作ってみます。

用意する物

・単三電池(アルカリ電池)×1
・銅線(直径1.6cmの物) 33cm×複数
・ネオジム磁石(直径1cm、厚さ3mm程度の物) 1~2個
・ペンチ ・ラジオペンチ ・ラムネ菓子の容器

ネオジム磁石は、現在人類が発明している中で最も強力な永久磁石(電磁石でない磁石)です。
インターネットで「ネオジム磁石」と検索すれば、簡単に手に入ります。
値段は大きさによりますが、大体1個当たり50円~150円以下です。

ネオジム磁石を扱う際の注意

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注意するべき点は、この磁石は「本当に強力」であるところです。
安いものでも、磁石同士を近くに寄せれば、本当に「飛んで」ひっつきます。
勢いよく飛んで指にぶつかられたり、皮を挟んでしまったりすると、かなり痛い目を見ます。

携帯やMP3プレイヤーに近づければ動作に異常が出たり、内部のデータに損傷が生じたりする危険性もあります。
磁気で情報を記録するHDD(ハードディスクドライブ)にとっては天敵です。
取り扱いには十分注意しましょう。

使用する電池に関する注意

使う電池は必ずアルカリ電池にしなくてはいけません。
充電電池(ニカド電池)やマンガン電池は、過熱して破裂や液漏れを起こす危険があります。
消耗が激しいので、複数用意しておくようにしましょう。

針金ではだめなのか?

銅線は針金よりもやや高価で、もっと安い物を選びたくなるかもしれません。
しかし、普通の針金は鉄を含むので、ネオジム磁石にひっついてしまい、回ることができません。
必ず、銅やスズなどの、「磁石にひっつかない金属」である必要があります。

銅線の中にはビニールなどで被覆されている物もあります。
単極モーターで銅線を回すと非常に熱くなるので、耐熱性がない物では溶けて有害な煙が出ることもあり得ます。
被覆されていない物を選ぶ方が安全です。

1.ワイヤーを切る

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ワイヤーカッターかペンチを使って、銅線を33cm程度の長さに切断します。
手を傷つけないように、軍手をしておいたほうが良いでしょう。
出来たら、片方の端を6mm程度の部分で直角に曲げ、L字型にします。

2.ワイヤーをコイル状にする

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ワイヤーを丸い物に巻き付け、スプリングかコイルのような形にします。
直径は乾電池より太ければよいので、ラップの芯などに巻き付けると便利です。
ラムネ菓子の筒は太さがピッタリです。

3.セットする

ネオジム磁石を電池のマイナス極側にひっつけます。
磁石のN極S極は考慮しなくても構いません。

コイルを電池にかぶせ、L字型に曲げた部分をプラス極側に置きます。

コイルを伸ばすか縮めるかして、下の先端部が磁石に接するようにします。
このとき、コイルが他の物には触れないように調整しましょう。

4.回してみる

コイルに電気が通ると、すぐに回転し始めます。
回り続けるには、常にコイルの両端が電極と磁石に接していないとだめで、上手に回すには、コイルの形状や大きさ、バランスなどの調整が必要です。
もしも磁石のパワーが足りないと感じたときは、二つ重ねてひっ付けて見ましょう。

止める場合には、コイルをはずせばすぐに止まります。
このときにはコイルはかなり熱くなっているので注意が必要です。

過熱による電池の損傷や発火を避けるため、あまり長時間回し続けるのも厳禁です。
人がいない所に放置するのもやめましょう。

単極モーターが回る原理

多くの電気モーターは、磁石の磁力と、コイルを流れた電流によって生じた磁力が反発することでコイルが回転する仕組みを持っています。
単極モーターも例外ではなく、下の図のような原理で回転しています。

単極モーターの原理

底に付けた磁石の磁力線と直角に電流が流れると、双方に直角になる向きに動く力(ローレンツ力)が生じます。
磁石に近い部分で銅線に生じるこの力が、回転を生じさせる元になっています。

磁石を反対向きにして磁力線の方向を変えれば、回転方向も反対となります。
電池を逆さにして、電流の流れる向きを変えても反対に回るようになります。

こんな形でも回る

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銅線をコイル型にしたのは、回転しても中心が変わらずに安定性が良いためです。
回転中にバランスが崩れて接続が外れるようなことがなければ、どんな形でも大丈夫です。

別バリエーション

ファラデーが作ったものと同じように、磁石を回転させる別バリエーションも作れます。
鉄くぎの頭にネオジム磁石を付け、くぎの先端部を電池のマイナス極側に付けます。
銅線は、電池のプラス極と磁石の側面を繋ぐ長さと形に切り取ります。

電池を手で持って、反対側の手で銅線を持ち、一端をプラス側に接触させます。
銅線の反対側をネオジム磁石の側面に接触させると、磁石が鉄くぎと共にコマのように回り始めます。
銅線は熱くなるので、軍手をつけて持つようにしましょう。

このタイプでは、磁石は銅線とは反対向きに回ります。
フレミング左手の法則で銅線にローレンツ力が働くのですが、銅線は手で固定されているので回りません。
代わり磁石が反発するので、銅線とは反対の向きに磁石が回転します。

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