柄・模様を付ける染め方
染めは色を付けるのみにあらず
「染め」はただ単に色を付けるだけでなく、模様を付ける技術も含まれています。
色が付くだけでも十分にきれいで実用性があるのですが、さらなる意味を付け加える時にも模様を付ける技術は不可欠です。
しっかりした文字や形を入れるにはそれなりの技術が要るものの、模様を入れること自体は簡単にできます。
後染めで布に模様や形を入れる時には、指定した場所に染め液が入ってこないように加工する「防染」という方法が使われます。
加工した部分に染め液が入ってこなければ、染めたときにその部分だけが白いまま残って、模様となるというわけです。
防染の方法はいろいろあり、水を弾く物質を塗り込むやり方や、型木でサンドして圧迫したまま染めるやり方などがあります。
一番シンプルで簡単なのは、輪ゴムや糸を使って布を縛る「絞り染め」の方法です。
雑巾を絞るように圧迫し、縛った部分に染め液が入ってこないようにします。
用意する物
・輪ゴム
・糸
・割りばし
1. 布を縛る
模様を付けたい部分に染め液が入ってこないように、可能な限りきつく縛って繊維を圧迫します。
後でほどくときに苦労するかもしれませんが、下手に緩くすると失敗しがちなので、なるべくきつく縛りましょう。
輪ゴムだけでは圧迫しにくいときは、割りばしを芯として布を巻きつけ、その上から縛るとやりやすくなります。
2. 染める
布を縛ったまま、普通に染めます。
染めから媒染が完了するまで、縛った部分をほどいてはいけません。
3. ほどく
媒染が終わって水ですすいだ後に、ほどいてみましょう。
上手くいけば、朝顔の花のような模様が出来ているはずです。
しわが気になる場合は、乾かしてからアイロンを当てて上げましょう。
もう少し高度な技法
輪ゴム縛りの場合、大体の大きさは調節出来る物の、現れる模様までは制御できません。
単純に絞るのではなく、刺繍のように針と糸を使うことで、思い通りの形を入れる方法もあります。
まず、布にチャコペンや鉛筆など、後で消せる物で図を描きます。
出来上がったら刺繍のように針と糸で、模様の入った部分の輪郭を縫い合わせ、きつく搾り上げます。
そのまま染め、出来たら糸を切って広げて乾かします。
縫うときは、タコ糸のような太く頑丈な糸を使えばやりやすくなります。
ただし、糸が太いと穴が大きくなり、強く絞ると破れ目が出来てしまう危険性もあるので注意しましょう。
単に白くするだけでなく、一度染めた後に縛って媒染した部分とそうでない部分を分けたり、媒染剤の種類を変えたりするなど、模様に色を付けることも可能です。
高度な方法1:ろうけつ染め
ろうけつ染めは、ろうを塗って繊維に染み込ませて防染する方法です。
布用のろうを鍋などで溶かし、筆に付けて白くしたい部分の模様通りに塗り付けます。
その後に染めて、洗剤でろうを煮洗いすれば出来上がりとなります。
高度な方法2:捺染
もう少し簡単な方法として、型紙と筆を使うやり方があります。
水に強い頑丈な紙に、切り絵のように染めたい模様を切り抜きます。
この紙を布の上に置いて、筆を使って上から染料を塗り付け、ステンシルのように布に形を付けます。
型友禅や更紗、銘仙のように、捺染を使う伝統的な織物も多数あります。
高度な方法3:糊置き染め
防染糊と呼ばれる糊を使い、ろうけつ染めと同じ原理で防染を行います。
型紙を置いた上から糊を塗り、切り抜いた部分に糊を浸透させます。
この後で染めると、糊が入った模様の部分だけが白抜きになるという原理です。
のりを使う方法は、均一にむらなく糊を染み込ませられるように、スプレーのりを使うのがおすすめです。
職人の技量次第で非常に細かく繊細な模様を付けることが出来、着物を作る反物に模様を付けるためにも使われていました。