銅媒染剤と鉄媒染剤
他の種類の媒染剤を作ってみる
玉ねぎ染めで媒染剤として使ったミョウバン(焼きミョウバン)は、「硫酸カリウムアルミニウム十二水和物」という物質の結晶です。
カリウムやナトリウムのイオンは媒染には役に立たないので、ミョウバンはアルミニウムイオンを使った媒染液となります。
当然ながら、媒染剤の種類が変われば、定着する色も変わります。
染物をするときには、ミョウバン以外の媒染剤を用意しておくと、もっといろいろな色を出すことができます。
媒染に使える金属
媒染剤に使われる金属には、ミョウバンのアルミ以外には、鉄、銅、スズ、クロム、ニッケルなどがあります。
これらの中でも特に多く使われるのが、鉄と銅です。
鉄や銅のイオン溶液は、硫酸銅や二酸化三鉄などの金属化合物を水に溶かせば簡単にできますが、これらの薬品は手に入れるのが面倒です。
日常で手に入る物を使って、媒染液を作りましょう。
鉄イオン媒染液の作り方
用意する物
・錆びた鉄くぎ
・酢
・ガラス瓶
今回の方法では、錆びた鉄(酸化鉄)を酢(酢酸)に溶かして溶液にします。
普通の状態の鉄は酢では溶けないのですが、酸化鉄なら酢酸にも溶けるようになります。
使用する鉄は、表面に赤さびが浮いている物なら何でも大丈夫です。
くぎ以外にも、ボルト、チェーンなど、ガラス瓶に入るサイズなら何でも構いません。
大きなものを一つ入れるより、細かい物がいくつか入れる方が、全体の表面積が広いので反応が進みやすく、濃い溶液が作れます。
もしも錆びたくぎがなければ、鉄くぎを買ってきて塩水や酢をかけ、新聞紙の上に広げて放置すれば、簡単に錆が浮いてきます。
ステンレスはさびにくいので、鋼鉄や軟鉄で出来ている物を使いましょう。
錆びたくぎが用意できたら、ガラス瓶に入れて、くぎ全体がつかるまで酢を入れます。
くぎの表面に泡が生じ、次第に液の色が濃くなっていきます。
このまま2~3日すれば完成です。
色が薄い状態は、三酸化二鉄の状態の鉄(赤さび)が溶けています。
ふたを開けて空気に触れるようになると酸化が進んで、四酸化三鉄(黒さび)になり、数分で真っ黒に変じます。
銅媒染液の作り方
用意する物
・銅線 ・酢 ・ガラス瓶
銅の媒染剤を作るときも、基本は鉄媒染液の時と同じです。
鉄釘の代わりに銅線を使いましょう。
銅の方が鉄よりも人体への有害性が高いので、より気を付けなくてはいけません。
用意する銅線は、表面がコーティングされていない剥き出しの物を使います。
エナメル線はコーティングされているために使えません。
ガラス瓶に入るように、ペンチを使って銅線を細切れにします。
ただし、銅のままでは酢には溶けないので、一旦さびさせる必要があります。
一旦酢に浸し、新聞紙などに広げて放置します。
1日か2日前後で、銅の表面が緑青(ろくしょう=酸化銅)に覆われます。
この状態で酢に浸すと、緑青が溶けて液が緑色になります。
2~3日して、緑青が表面から剥がれて溶けきってしまえば完成です。
媒染剤の使い方
両方とも原液のままでは濃すぎるので、100~1000倍に薄めて使います。
ミョウバンの媒染液の時と同じように、ステンレス製ボウルに入れて水で薄め、染めた布を浸して媒染します。
使用したボウルは別の用途には使わないようにしましょう。
体には良くないので、染めるボウルは料理には再利用してはいけません。
また、他の媒染剤や染め用に使うときは、洗い残しがあると色が変わってしまうことがあるので、媒染剤ごとに専用のボウルを用意しておきましょう。
玉ねぎ染めで使ってみた場合
玉ねぎ染めでこれらの媒染剤を使うと、下の写真のようになりました。
左上が媒染無し。
右上がミョウバン(アルミニウム)。
左下が銅。
右下が鉄となっています。
アルミの媒染は明るい色に仕上がり、銅媒染はそれよりもやや深い色、鉄は黒に近くなります。
他の染物では、銅を使うとやや寒色系に近い色合いになることが多いようです。
鉄を使えば、ほぼ例外なく暗い色になります。